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ビル管法とは?目的や建築物環境衛生管理基準について解説!

「ビル管法って何?」
「どんな建物が対象になるの?」
「違反したらどうなるの?」
―ビル管理に携わる方であれば、一度はこうした疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。
ビル管法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)は、多くの人が利用する建築物の環境衛生を適切に維持・管理するために定められた重要な法律です。
ビル管理業者にとって、この法律の内容を正確に理解することは、業務遂行上の義務であるだけでなく、安全で快適な建物環境を提供するための基盤となります。
本記事では、ビル管法の目的や対象となる特定建築物の条件、具体的な管理基準・検査項目、必要な届出・資格、違反時の留意点までを、わかりやすく体系的に解説します。
ビル管法とは?
ビル管法の正式名称と概要
ビル管法は、正式名称を「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」といい、1970年(昭和45年)に制定されました。
多数の者が使用し、または利用する建築物(通称「特定建築物」)の衛生的環境を確保することを目的とした法律です。
この法律は、特定建築物の所有者、占有者、管理者に対して、空気環境、給排水、清掃、ねずみ・昆虫等の防除など、多岐にわたる建築物環境衛生管理基準を遵守することが求められています。
これにより、建築物利用者の健康被害を未然に防ぎ、快適な環境を提供することを目指しています。
監督官庁は厚生労働省であり、特定建築物の管理者は、この法律に基づき、適切な環境衛生管理を行う責任を負います。
ビル管法が制定された背景
ビル管法が制定された背景には、高度経済成長期における都市部のビル建設ラッシュと、それに伴う健康問題の顕在化があります。
当時、密閉性の高い建築物が増加し、換気不足や空調設備の不備、水質管理の不徹底などにより、シックビル症候群やビル熱と呼ばれる健康被害が多発しました。
これらの問題は、頭痛、めまい、吐き気、アレルギー症状などを引き起こし、社会問題となりました。
このような状況を受け、公衆衛生の観点から、建築物の衛生的環境を科学的かつ専門的に管理するための法整備が急務とされ、ビル管法が制定されました。
これにより、建築物の環境衛生管理に関する基準が明確化され、専門的な知識を持つ人材(建築物環境衛生管理技術者など)の育成・配置が義務付けられるようになりました。
ビル管法の目的
ビル管法の最も重要な目的は、特定建築物の衛生的環境を確保し、公衆衛生の向上及び増進を図ることにあります。
具体的には、以下の点を通じて利用者の健康と安全を守り、快適な社会生活を支援することを目指しています。
- 健康被害の防止…空気汚染、水質汚染、害虫の発生などによる健康リスクを排除します。
- 快適な環境の提供…適切な温度、湿度、清浄な空気、清潔な施設を維持し、利用者が快適に過ごせる空間を提供します。
- 建築物の健全な維持管理…設備や施設の適切な保守管理を通じて、建築物自体の劣化を防ぎ、長期的な利用を可能にします。
- 公衆衛生の維持…感染症の拡大防止など、社会全体の公衆衛生水準の向上に貢献します。
これらの目的を達成するために、ビル管法は具体的な管理基準を定め、特定建築物の管理者に対し、その遵守を義務付けているのです。
ビル管法の対象となる「特定建築物」とは
特定建築物の定義・条件
ビル管法が適用されるのは、政令で定める規模以上の「特定建築物」です。
特定建築物とは、「多数の者が使用し、又は利用する建築物」のうち、以下の用途に供される部分の延べ面積が政令で定める規模以上であるものを指します。
これらの条件を両方満たす建築物が特定建築物となり、ビル管法の規制対象となります。
用途
※病院や共同住宅は、用途構成により対象となる場合もありますが、一般的には特定建築物に該当しないケースも多いため、個別判断が必要です。
規模
- 事務所、店舗、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場、旅館、ホテル、病院、興行場などの場合…延べ面積3,000㎡以上
- 学校の場合…延べ面積8,000㎡以上
特定建築物に該当する建物の具体例
上記定義に当てはまる具体的な建物の例としては、以下のようなものがあります。
- 大規模なオフィスビル(総合ビル)
- ショッピングモールやデパート
- 大規模ホテルや旅館
- 総合病院
- 大学や専門学校(延べ面積8,000㎡以上)
- コンサートホールや劇場、映画館
- 公共の図書館、博物館、美術館
- 駅ビルや空港ターミナルビル(多くの場合、店舗や事務所が含まれるため)
これらの施設は、日常的に多くの人が利用するため、衛生的環境の維持が特に重要視されます。
特定建築物に該当しない建物
一方で、以下の建物はビル管法の特定建築物には該当しません。
- 住居のみの建物…マンションやアパートなど、居住を目的とする建物は対象外です。
- 工場、倉庫…原則として対象外ですが、建物内に事務所や店舗等の特定用途部分があり、かつ規模要件を満たす場合は対象となることがあります。
- 小規模な店舗、事務所…延べ面積が3,000㎡(学校は8,000㎡)未満の建物は対象外です。
- 個人住宅…明らかに多数の者が利用する施設ではないため、対象外です。
ただし、特定建築物に該当しない建物であっても、労働安全衛生法や各自治体の条例など、別の法律や規制に基づいて衛生管理が求められる場合があります。
ビル管法で定められた管理基準(建築物環境衛生管理基準)
ビル管法では、特定建築物の衛生的環境を確保するため、「建築物環境衛生管理基準」が定められています。
この基準は、空気環境、給排水、清掃、ねずみ・昆虫等の防除の4つの柱から構成されており、それぞれに具体的な管理項目と基準値、測定頻度が規定されています。
空気環境の調整
建築物内の空気は、利用者の健康に直接影響を与えるため、ビル管法では特に厳格な基準が設けられています。
定期測定(2ヵ月以内ごとに1回)
特定建築物では、以下の項目について、2ヶ月以内ごとに1回、定期的に測定し、基準値を満たしているかを確認する必要があります。
- 温度…18℃以上28℃以下(居室の室温)
- 相対湿度…40%以上70%以下(居室の相対湿度)
- 一酸化炭素(CO)含有率…10ppm以下
- 二酸化炭素(CO₂)含有率…1,000ppm以下
- 浮遊粉じん量…0.15mg/㎥以下
- 気流…0.5m/s以下
これらの基準値を維持するためには、適切な換気設備の設置と定期的な点検・清掃が不可欠です。
ホルムアルデヒドの測定
新築または大規模な改修を行った特定建築物では、建材から発生するホルムアルデヒドによる健康被害を防止するため、以下の測定が義務付けられています。
- 測定頻度…その使用を開始した時点から直近の6月1日から9月30日までの間に1回
- 基準値…0.1mg/㎥以下(0.08ppm以下)
これは、いわゆる「シックハウス症候群」対策の一環であり、建材の選定にも注意が必要です。
給水・排水の管理
飲料水をはじめとする給排水設備の衛生管理も、ビル管法における重要な項目です。
飲料水の管理(水質検査項目一覧)
特定建築物で供給される飲料水は、水道法に基づく水質基準を満たす必要があります。
主な検査項目は以下の通りです。
- 必須項目…色、濁り、臭気、味、残留塩素、pH値、大腸菌、一般細菌など
- 全51項目…水道法で定められたすべての水質基準項目(給水開始時など)
水道・専用水道のみを水源とする場合の定期検査
- 7日以内ごとに1回…残留塩素の測定
- 1年以内ごとに1回…水質基準に関する省令で定められた全51項目の水質検査
地下水など水道以外の水を水源に含む場合の定期検査
地下水や井戸水などを水源とする場合は、より厳重な管理が求められます。
- 7日以内ごとに1回…残留塩素の測定は、法令上は7日以内ごとに1回する必要があります。施設の運用状況によっては、より高頻度(毎日等)測定が行われることもあります。
- 1年以内ごとに1回…水質基準に関する省令で定められた全51項目の水質検査
簡易専用水道(受水槽の有効容量が10㎥を超えるもの)の場合
-
水道法に基づく管理義務が課され、年1回以上の清掃や水質確認等を実施する必要があります。
※ビル管法とは別制度ですが、実務上は一体的に管理されるケースが一般的です。 - 水質検査(色、濁り、臭気、味、残留塩素、大腸菌)
雑用水の管理と定期検査
トイレの洗浄水や散水などに利用される雑用水についても、衛生的な管理が求められます。
- 基準…色度、濁度、pH、臭気、大腸菌などが定められています。
- 定期検査…1年以内ごとに1回、水質検査を実施します。
排水の管理
排水設備や汚水槽、排水槽なども、悪臭や害虫の発生源とならないよう、適切に管理する必要があります。
- 清掃・点検…6ヵ月以内ごとに1回以上、清掃と点検を実施します。
- 悪臭・害虫対策…防臭装置の点検、破損箇所の補修などを行います。
清掃・廃棄物処理
建築物の清潔さを保ち、利用者に快適な環境を提供するため、清掃と廃棄物処理に関する基準も重要です。
日常清掃と定期清掃
- 日常清掃…利用状況に応じて、毎日または数日ごとに実施される清掃です。床、トイレ、ゴミ箱の清掃などが含まれます。
- 定期清掃…専門的な技術や機器を要する清掃です。カーペットの洗浄、窓ガラス清掃、高所の清掃などを、計画に基づいて実施します。
清掃計画を策定し、適切な方法と頻度で実施することが求められます。
廃棄物の適切な処理
特定建築物から排出される廃棄物は、廃棄物処理法に基づき、適切に分別、保管、収集、運搬、処分されなければなりません。
- 分別…一般廃棄物と産業廃棄物を適切に分別します。
- 保管…衛生的に保管し、悪臭や害虫の発生を防ぎます。
- 処理…許可を得た業者に委託するなど、適正な方法で処理します。
特に病院などでは、感染性廃棄物の処理にも特別な注意が必要です。
ねずみ・昆虫等の防除
ねずみや昆虫(ゴキブリ、ハエなど)は、利用者に不快感を与えるだけでなく、感染症を媒介する可能性もあるため、その防除は不可欠です。
- 発生状況の調査…定期的に建築物内外の発生状況を調査し、生息場所や侵入経路を特定します。
- 防除計画の策定と実施…調査結果に基づき、駆除方法や予防策を含む計画を策定し、実施します。
- 環境整備…餌となるものの除去、清掃の徹底、侵入経路の閉鎖など、ねずみ・昆虫が生息しにくい環境を整備します。
- 定期的な点検・駆除…原則として定期的(おおむね6ヵ月以内ごと)に点検を実施し、発生状況に応じて防除を実施します。
ビル管法における届出と資格
ビル管法を遵守するためには、特定建築物の管理者にはいくつかの義務が課せられます。
特定建築物所有者等の届出義務
特定建築物の所有者、占有者、または管理者は、その建築物が特定建築物に該当することになった場合、都道府県知事(または保健所設置市の市長)に届け出る義務があります。
この届出には、建築物の概要、管理体制、建築物環境衛生管理技術者の選任状況などが含まれます。
建築物環境衛生管理技術者の選任義務
特定建築物ごとに、建築物環境衛生管理技術者を1名選任し、その業務を統括管理させることが義務付けられています。
この資格は、厚生労働大臣が実施する講習を修了するか、国家試験に合格することで取得できます。
建築物環境衛生管理技術者は、ビル管法に基づく管理基準の遵守、各種測定・検査の実施、維持管理計画の策定・実行など、建築物の衛生的環境を総合的に管理する責任を負います。
その他の資格
ビル管法に関連して、以下のような専門資格を持つ人材が、それぞれの分野で重要な役割を担います。
清掃作業監督者
建築物清掃に関する専門知識を持ち、清掃作業の計画・実施・監督を行います。
空気環境測定実施者
空気環境測定に関する専門知識を持ち、測定機器の操作や結果の評価を行います。
貯水槽清掃作業監督者
貯水槽の清掃に関する専門知識を持ち、清掃作業の計画・実施・監督を行います。
防除作業監督者
ねずみ・昆虫等の防除に関する専門知識を持ち、防除作業の計画・実施・監督を行います。
ビル管法違反のリスクと罰則
ただし、衛生上の支障が生じ、又は生じるおそれがある場合には、行政庁から改善命令等が出されることがあります。
当該命令に従わない場合には、罰則が科される可能性があります。
改善命令・使用停止命令
所轄の行政庁から、施設の改善命令や、状況によっては施設の一部または全部の使用停止命令が出されることがあります。
罰金・懲役
改善命令に従わない場合、30万円以下の罰金が科せられることがあります。例えば、建築物環境衛生管理技術者の未選任や虚偽の届出には罰則規定があります。
企業イメージの失墜と社会的信用の低下
違反が公になった場合、企業のブランドイメージが著しく損なわれ、顧客や取引先からの信用を失う可能性があります。
利用者からの損害賠償請求
衛生管理の不備が原因で利用者が健康被害を受けた場合、損害賠償請求の対象となる可能性があります。
専門業者に委託するメリット
ビル管法に基づく建築物環境衛生管理は、専門的な知識、技術、設備が必要となるため、自社で全てを賄うのは容易ではありません。
そこで、多くのビル管理業者が専門業者への委託を検討しています。
専門業者に委託するメリットは以下の通りです。
専門知識と技術の活用
ビル管法に精通した専門家が、最新の知見と技術で管理業務を行います。
法令遵守の徹底
法改正への対応や、複雑な管理基準の遵守を確実にサポートします。
最新設備の活用
自社で高価な測定機器や清掃機器を導入する必要がなく、専門業者の設備を活用できます。
業務効率の向上とコスト削減
専門業者に任せることで、自社のリソースをコア業務に集中させることができ、結果的にコスト削減につながる場合があります。
リスクの低減
専門業者の知見と経験により、違反リスクを低減し、万が一のトラブルにも迅速に対応できます。
信頼できる専門業者と連携することで、ビル管法遵守はもちろん、より質の高い衛生的環境の提供が可能となります。
まとめ
ビル管法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)は、多数の人が利用する特定建築物の衛生的環境を確保し、公衆衛生の向上を図るための重要な法律です。
ビル管理業者として、ビル管法の正確な理解と遵守は、利用者の健康と安全を守り、快適な空間を提供するための基盤となります。
また、法令違反は企業の信頼性や事業継続に大きな影響を及ぼす可能性があります。
常に最新の情報を確認し、必要に応じて専門家や専門業者と連携しながら、適切な環境衛生管理を徹底していくことが求められます。
ビル管法に関するご不明な点や具体的な対策については、専門機関や信頼できるビル管理会社にご相談されることが重要です。



