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ファシリティマネジメント(FM)とは?「3つのレベル」やメリットなどをわかりやすく解説

ファシリティマネジメント(FM)とは、「企業や団体が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」と定義(公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会)と定義されています。
オフィスビル、工場、公共施設などのさまざまな建物や資産を対象に、コスト削減や安全性の向上、環境への配慮などが求められます。
この記事では、ファシリティマネジメントの「3つのレベル」を中心に、その具体的な取り組み方や、企業にとってのメリットについてわかりやすく解説します。
ファシリティマネジメント(FM)とは?
ファシリティマネジメント(FM)とは、「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」(日本ファシリティマネジメント協会)と
定義されています。
企業や公共団体が所有または管理する建物や設備などの施設を効率的に管理し、組織全体の業務の効率化や快適な環境づくりを支援するための戦略的な管理手法です。
FMの役割は、資産の最適利用やメンテナンスを通じて、コスト削減と安全性向上を実現し、また長期的な価値向上にも貢献することです。
ファシリティマネジメント(FM)の重要性
現代の企業や公共団体にとって、施設管理の効率化はますます重要な課題となっています。 特に、オフィスや工場、病院、学校といった施設では、エネルギーコストやメンテナンス費用の削減、安全な労働環境の提供、そして持続可能性が求められています。
FMは、これらのニーズに応え、業務効率を最大化するだけでなく、施設の長寿命化やリスク管理の向上にもつながります。
さらに、FMの実践により、組織全体の運営がスムーズに進むため、ビジネス全体の生産性と競争力を高めることができます。
ファシリティマネジメント(FM)とプロパティマネジメント(PM)の違い
ファシリティマネジメント(FM)とプロパティマネジメント(PM)は、しばしば混同されますが、管理の目的や対象が異なります。
FMは「施設の使用・運用」に焦点を当て、資産の効率的な運用を通じて組織の目標達成をサポートします。
具体的には、オフィスビルや製造施設の管理、保守点検、エネルギー効率の向上といった業務が含まれます。
一方で、プロパティマネジメント(PM)は「不動産の価値向上」に重点を置き、収益最大化や資産価値の保全を目的としています。
PMは、不動産賃貸業務やテナント管理、賃料の設定・回収、建物価値を保つための設備投資などを担当し、投資家や不動産オーナーに利益をもたらす役割を担います。
したがって、FMが企業内部の業務効率と環境の最適化に向けた管理であるのに対し、PMは投資対象としての不動産価値に焦点を当てた管理と言えます。
ファシリティマネジメント(FM)の標準業務サイクル
ファシリティマネジメント(FM)における効率的な管理を実現するためには、標準業務サイクルの確立が重要です。
FMの標準業務サイクルは、計画(Plan)、実行(Do)、確認(Check)、改善(Act)のPDCAサイクルを基に構成され、持続的な改善と効率化が図られます。
ここでは、FMにおける標準的な業務サイクルを段階ごとに解説します。
1.計画(Planning)
まず、施設の管理計画を策定する段階です。現状の課題や改善点を特定し、施設管理の目標と施策を設定します。
例えば、エネルギーコストの削減やセキュリティ強化、予防保全の実施計画などが含まれます。
この段階では、施設や設備の利用データを収集し、計画の根拠とすることが重要です。
2.実施(Implementation)
計画に基づいて具体的な管理業務を実行する段階です。
施設の運用管理や保守点検、清掃やセキュリティ管理といった日常業務が含まれます。
また、エネルギー管理システムやセキュリティシステムの導入・運用も、この段階で行われます。
実行段階では、スケジュールに基づいて確実に作業を進めることが重要であり、現場での対応力が問われます。
3.評価(Evaluation)
実施した施策や管理業務の効果を評価し、目標に対する達成状況を確認します。
この確認作業には、データの収集と分析が欠かせません。
たとえば、ArcLibなどのツールを利用することで、エネルギー使用量の変動や設備の稼働状況などのデータを簡単に可視化し、分析を行うことができます。
効果測定を通じて、目標に対しての進捗状況や達成度を把握し、次の改善策に役立てます。
4.改善(Improvement)
確認段階で得られた評価結果を基に、さらなる改善策を検討・実施する段階です。
ここでの改善は、次回の計画にフィードバックされ、業務サイクル全体の精度が向上します。
例えば、エネルギー効率が期待より低かった場合には、設備のアップグレードや運用ルールの見直しを検討します。
また、予防保全計画の強化や作業フローの最適化といった具体的な改善策を実行し、施設管理の精度を高めていきます。
ファシリティマネジメント(FM)における3つのレベル
ファシリティマネジメント(FM)では、効率的な施設管理のために3つのレベルに分けたアプローチが推奨されます。
これにより、短期的な日常業務から、長期的な戦略的施策まで一貫した管理が可能となります。
それぞれのレベルを順に見ていきましょう。
レベル1:オペレーショナルFM
オペレーショナルFMは、日々の運用管理を担う基本的なレベルです。 具体的には、清掃、修繕、セキュリティ、空調や照明など、日常的な施設維持に関する業務が含まれます。現場での管理者が中心となり、日常的に問題を解決しながら、施設の安全と快適性を保ちます。
このレベルでは、迅速かつ確実な対応が求められ、故障が発生した場合には即時対応が必要です。
レベル2:タクティカルFM
タクティカルFMは、中期的な視点での管理・計画を行うレベルです。
この段階では、コスト削減や効率化を目的とした施策を立案し、施設のパフォーマンスを最大化することが目標となります。
たとえば、エネルギー使用量の削減を目指した省エネ対策や、設備の計画的なメンテナンス計画が挙げられます。
このレベルでは、日々のデータを分析し、必要な改善策を講じることが重要です。ArcLib(アークリブ)などの管理ツールを活用することで、データに基づいた計画策定と実行管理が容易になります。
レベル3:ストラテジックFM
ストラテジックFMは、施設管理の最も高いレベルで、組織のビジョンや経営戦略に基づく長期的な資産管理と意思決定を行います。新しい施設の建設や大規模なリノベーション、リスク管理、投資計画などがこのレベルに含まれます。
ストラテジックFMでは、組織全体の成長戦略と連携し、FMの役割を戦略的に位置付けることが求められます。ここでは、長期的な投資計画やリスク分析を通じて、施設管理のあり方を組織全体のビジョンに合わせて最適化します。
ファシリティマネジメント(FM)の具体例
ファシリティマネジメント(FM)では、企業や公共団体の施設や資産を効率的に管理するため、実際の現場ではさまざまな施策が取られます。
以下に、特に効果的なFMの具体的な実施例をいくつか挙げ、どのように業務改善やコスト削減、環境負荷の軽減に寄与しているかを解説します
エネルギー管理システムの導入
FMの中でも注目される施策の一つが、エネルギー管理システムの導入です。
電気、ガス、水道といったエネルギー消費を一元的に管理することで、消費状況の見える化が可能になります。
たとえば、照明や空調設備の自動調整、ピーク時の消費抑制などにより、日常の運用で効率的なエネルギー使用が実現されます。
これにより、コスト削減に加え、CO2排出量削減という環境負荷の軽減も期待できます。
セキュリティ対策の強化
施設の安全性を確保するため、セキュリティ対策もFMの重要な取り組みの一つです。
具体的には、監視カメラや入退室管理システムの導入が挙げられます。
監視カメラは不審者の侵入を防止し、資産や情報を保護するために重要な役割を果たします。
また、社員や外部来訪者の入退室をデジタル管理することで、不要な立ち入りを制限し、業務環境の安全性を向上させます。
このような対策により、従業員が安心して働ける環境が整い、生産性向上にもつながります。
設備予約システムの利用
特にオフィス環境では、会議室やフリースペースといった施設を効率的に利用するために、設備予約システムが役立ちます。
予約システムを導入することで、会議室の空き状況が一目でわかり、利用者のスケジュール調整が容易になります。
結果として、無駄なスペースの利用が削減され、施設の有効活用が促進されます。
さらに、使用頻度や人気のある設備のデータも蓄積されるため、今後のスペース管理の最適化にも貢献します。
メンテナンスの予防保全と遠隔モニタリング
メンテナンス業務では、故障が発生してから対応する従来の方法に代わり、予防保全の考え方が重要です。
予防保全では、定期的な点検や部品交換によって、設備トラブルを未然に防ぎます。
さらに、近年ではIoT技術を活用した遠隔モニタリングが進化しており、リアルタイムで設備の稼働状況を監視することが可能です。
これにより、異常が発生した際には即座に対応でき、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
清掃・衛生管理の高度化
清掃や衛生管理も、FMにおいて非常に重要な業務です。
オフィスや公共施設などでは、コロナ禍を機に衛生管理の意識が高まっており、抗菌・抗ウイルス対策が求められるようになっています。
ここで、最新の清掃機器や衛生管理システムを導入することで、効率的かつ徹底的な清掃が可能になります。
さらに、清掃スケジュールや消耗品の在庫管理をデジタル化することで、人的ミスを防ぎ、衛生環境の維持を容易にすることができます。
ファシリティマネジメント(FM)のメリット
ファシリティマネジメント(FM)は、施設や資産を戦略的に管理することで、企業や公共団体にさまざまなメリットをもたらします。
ここでは、ファシリティマネジメント(FM)を導入することで得られる主要なメリットについて詳しく解説します。
コスト削減
ファシリティマネジメント(FM)を導入することで、維持管理にかかるコストの削減が期待できます。
設備の老朽化を予防保全によって防ぐことで、修理や交換の頻度を減らし、長期的な費用を削減できます。
また、エネルギー管理システムを導入することで電力や水の消費量を最適化し、ランニングコストを抑えることができます。
リスク管理と安全性の向上
ファシリティマネジメント(FM)には、施設内のリスクを管理し、安全性を高める役割もあります。
設備の定期点検や監視を行い、異常が発見された際には早期に対応することで、事故やトラブルを未然に防ぎます。
例えば、防火システムやセキュリティ対策の導入は、災害や犯罪リスクを低減し、従業員や利用者が安全に過ごせる環境を提供します。
環境負荷の軽減と持続可能性
環境への配慮は、近年のファシリティマネジメント(FM)における重要な要素となっています。
エネルギー効率の向上やリサイクルの促進、廃棄物の削減を通じて、施設の環境負荷を減らすことができます。
例えば、太陽光発電やLED照明の導入により、エネルギー消費を抑えつつ持続可能な運用が可能です。
従業員の働きやすい環境の提供
FMは、単なる設備管理だけでなく、働く人々にとって快適で安全な環境を整備する役割も担います。 快適な温度や湿度、十分な照明、清潔な施設など、従業員が快適に働ける環境を提供することで、従業員のモチベーションや生産性が向上します。
また、適切なスペース管理により、働き方に合わせた柔軟な空間配置が可能となり、オフィスの利用効率も向上します。
ファシリティマネジメント(FM)に取り組むステップ
ファシリティマネジメント(FM)に取り組む際には、段階的なアプローチが重要です。
施設管理は幅広い分野に及ぶため、組織や施設の特性、また事業目標に合わせた具体的な実施方法が求められます。
ここでは、FMにおける取り組み方のステップについて詳しく解説します。
1.現状の把握と課題の明確化
まずは、施設の現状を把握し、課題を洗い出すことがFMの取り組みの第一歩です。
施設の維持費、エネルギーコスト、修繕計画、利用状況など、あらゆるデータを収集し、現状を可視化します。
この過程では、設備の劣化具合やエネルギー消費量の増加といった課題が明らかになることが多く、こうした情報を基に改善ポイントを特定します。
2.計画の策定と優先順位の設定
現状把握が終わったら、改善すべきポイントに基づいて計画を立て、取り組みの優先順位を設定します。
例えば、即効性のあるコスト削減施策や安全性の向上が急務である場合、短期的な施策と中長期的な施策を組み合わせた計画が有効です。
さらに、施設の長寿命化を目指す際には、資産管理の視点を持ちながら、リスク管理も視野に入れた戦略的な計画を策定します。
3.実行とデータの収集
計画に基づき、具体的な取り組みを開始します。
ここでは、定期的なメンテナンス、エネルギーの管理システム導入、セキュリティ対策の強化など、具体的な行動が必要です。
また、各施策の実施状況や成果をデータとして収集することも重要です。こうしたデータは、後の改善や調整に役立ち、PDCAサイクル(計画・実行・確認・改善)を効果的に回す基盤となります。
4.成果の評価と改善
実施した施策がどの程度の効果を発揮したかを評価し、必要に応じて改善を行います。
ここでは、計画に対する成果や費用対効果、安全性の向上度合いなどを評価指標とし、より最適な施設管理が行われるように調整を加えます。
このプロセスを繰り返すことで、FMの精度が高まり、施設の効率的な運用が実現します。
まとめ
ファシリティマネジメント(FM)は、企業や公共団体にとって欠かせない戦略的なアプローチです。施設や資産の管理を通じて、コスト削減や業務効率の向上、安全性の確保、そして環境への配慮といった多方面でのメリットが期待できます。
本記事で紹介した「3つのレベル」――オペレーショナル、タクティカル、ストラテジック――に基づく段階的なアプローチを実践することで、企業は持続的な成長を支える堅実な施設管理を実現できるでしょう。
また、ファシリティマネジメント(FM)の実施には効率的なツールの活用も重要です。
施設管理業務支援ツール「ArcLib(アークリブ)」のような維持管理に着目したシステムを導入することで、メンテナンスの効率化を図ると同時にデータの一元管理を進め、運用状況の把握の簡便化、施設管理の精度の向上が行えます。これにより、FMの取り組みが組織の全体戦略と整合し、施設の所有者と維持管理者双方の企業価値の向上につながります。